2013年8月14日水曜日

艦これ~沈んだ世界から 第四話

 空は暗いぐらいに晴れていて、風も穏やか……

「絶好のデート日和ですね! 参謀!」

 僕の問いかけに、彼女は不機嫌に「そうだな」とだけ答えた。


 白いワンピースに大きな麦わら帽子という、一見清楚な格好の大井参謀は、機嫌にそぐわず充分に可愛らしい。


 緊張の沈黙……

「あー、何で、こんなところで釣りなんてしているんだ!」

 参謀は、だだをこねる子供のように、釣り竿を放り出すと、甲板の上に寝っ転がった。

 「こんなところで」呼ばわりされた神通は黙っている。

 それは神通に失礼じゃないかな、と思った刹那、参謀は言葉を訂正した。

「こんなところとは、ちょっと言い過ぎた。神通、悪かった」

 神通は「とんでもない事です!」と珍しく声を張って、慌てたように返事をした。


 場所は、陸地からそう離れていない洋上である。

 航海演習だの機動演習だのと言う名目だ。

 この海域で、深海棲艦に出くわす事は今までなかったから、慣れていない神通にも丁度良いだろうという判断だ。

 危険な事なんて何一つない。

 本来、僕と参謀は、同時に海に出てはいけない事になっているが、それでもこうして出てきたのは、そんな気の緩みから来ている。




 酒盛りの晩に、叢雲さんから受けた命令は、参謀とのデートである。

 僕は渋々、しかし、これで全部清算出来るのならと、その提案に賛成した。

 小さな参謀を連れて歩く事はやぶさかではない。姪っ子か、歳の離れた妹か、街行く人の目にはそのように映るだろうから。

 彼女も当初は、このプランに乗る気だった。

 何処何処のキネマ座で活動を見に行こうとか、あそこのキャフェの評判がどうのとか、相談していると、ある時――何の前触れもなく――俄に機嫌を反転させた。

「そういう事なら、明日の事は中止だ!」

 と、訳の分からぬまま部屋を追い出される羽目になった。


 何が彼女の気に障ったのかは、今となっても不明であるが、姦しい駆逐艦曰く、「そう言う計画は、一人で考えるものでしょ」と馬鹿にされた。

 ただ、それが大井参謀の本心かどうかは分からない。

 その日のうちに今日の演習が計画され、準備は勝手に進められた。




 勝手に……とは言え、この妙な動きを伝令の水兵に聞かされた。

 彼は、参謀がまた無茶な仕事を押し付けてきたと愚痴を言い、また出来れば、僕の口から進言して欲しいと言う旨の依頼である。

 僕は、「なるべく期待に添うように努力するよ」と返したが、水兵自身は何の期待もしていない様子だった。

 ただの使い走りだろう。「言うだけは言ったからな」と言う態度で、男が出て行くと、執務室の扉は、映画のセットのように安っぽい音を立てた。


 僕は、その後、考える暇など己に与えず、大急ぎで鎮守府を後にした。

 僕の言葉一つで、大井参謀が方針転換するなどと言う事は、あの水兵と同様、僕にも全く考えられない事だったからだ。

 お世話になった、あの漁船の船長に会いに行こう。

 電報を一本打つと、通りで掴まえた無害馬車の馭者に少し無理を言って、漁港までの道を急いだ。


 船長は、急な問い合わせに快く応じてくれた。

「大井殿は困ったものだな」

 笑い声を立てる彼に、僕は同意して良いものかどうか、困ってしまってどぎまぎしていた。

「誰に聞かれる訳じゃねぇんだ、気にするなよ」


「まぁ、先ずは釣りだな」

 彼女に関しては何でも知っているという顔で、船長は釣り竿を僕に突き出した。

「参謀は釣り好きなんですか?」

「いや」

 参謀に劣らず、船長も訳の分からない人間だ。

 「知ってるんですか?」は「知らない」と、「見たんですか?」には「見ていなくても分かる」と言う具合に、僕を翻弄した。

 船長からは、アドバイスらしいアドバイスなど、一つも貰えず――ただ、僕の悩みを聞いてくれた事には感謝しているけれど――釣り道具二組と、餌、釣りの仕方とコツを伝授される。

 そうして最後に、「この包みの中には、麦わら帽子と白いワンピースが入っている――お前からのプレゼントって事にしておけよ」と耳打ちされた。

 荷物を抱えた状態で、僕は最終の木炭バスに揺られて、鎮守府へ帰っていった。




 今朝、出航の時となると、参謀の部屋に押し入って、「今すぐこれに着替えて桟橋まで来て下さい」と昨日の包みを突き出した。

 僕は参謀の顔を見ずに――僕の表情を覗き見られないように――部屋を出て行く。

 果たして、彼女は定刻に間に合うように姿を現した。





「どうせ、貴様の事だ。奴に意見を仰いだんだろう?」

 甲板に寝っ転がる彼女は、訳知り顔で僕を見つめた。

 生意気なガキに見えたので、僕は、即座に嫌みを言い返した。

「喜んでいるくせに」

 この面倒臭い人は、目上とは言え、それぐらいで良いのだ。今まで緊張していたのが馬鹿らしく思えて来る。

「うるさい」

 音節を区切った憎たらしい口調の彼女は、やはり愉快そうだ。

「いいじゃないですか。こういうの」

 自分でも何が"いい"のか分からないが、意味もなくそんな言葉が口を突いて出てきた。

「いいのか? お前はそういうのが」

 この辺から、何を話しているのか、自分でもよく分からなくなっていたが、それでも、言葉の行き帰りだけはしっかりと続いている。

「お嫌いなんですか?」

「不満はない」

 少女は、頬を膨らませると、寝返りを打って、僕から離れていった。


 数十分、その穏やかな時間は続いた。

 言葉も交わさず、彼女は寝転んだまま鼻歌を鳴らし、僕はただ、食い付きもしない釣り竿の先ばかりを見ていた。


「全艦抜錨!」

 何を感じたのか、参謀が立ち上がった。

「提督、帰るぞ。退屈だ!」

「同感です」




 無骨な艦橋を背景に立ち上がった姿は、相対的に美人に見えた。

 風になびくワンピースは、動的なイメージを与え、両手で押さえた帽子は、可愛らしさを演出する。

 何もかも、完璧に全部が全部揃っていたような気がした。


 四隻の船は走る。走る。

 母港に向けて――「提督、8海里行った所に何かいる!」

 先行する子日の声だ。

「神通!」

 カタパルトを水上機が走る。

 レシプロのエンジン音が、遠く離れていく。




 相手の船は、四隻固まって停泊していた。

 我々は、水平線ギリギリにそれを捉える位置に止まり、神通が飛ばした水上機――彼女曰く、水上偵察機の視界を遠隔的に見る事が出来るのだという――の到着を待った。

 そして、「もうすぐ上空です」の報告の後、彼女は言葉を失った。

「どうしたんだ、何があるんだ!」

 艦橋に戻って怒鳴りつけると、参謀は「そんな口の利き方があるか!」と僕を叱った。

 そうだよね。女が男に言うのは問題ないよね――と我が心をなだめつつ、神通になるべく優しい口調で聞いてみると、「多分、行っても大丈夫です」と言う。

 何のことかよく分からないが、大丈夫というなら、行くしかないだろう。




 現地に到着して、言葉を失ったのは、僕だけじゃない――けれど、駆逐艦三隻はそうでもなかった。

 四隻のうち、一隻は深海棲艦である。そして、三隻のうち二つは軽巡、一つは水上機母艦だ。

 深海棲艦は事切れていた。三隻は、その生物的な部分に船首や船尾を突っ込み――それを喰らっているように見えたのだ。

「提督……私達は、生きる為に深海棲艦を食べなくちゃいけないの。

 深海棲艦も私達を食べて生きているのよ。

 あんた達みたいに、補給してくれる人がいないから」

 叢雲の説明に、一同は黙っていた。

 三隻の船は、僕たちの姿に全く気が付いていないようだ――叢雲さんは次いで、「食べている間は、私達も深海棲艦みたいなものよ。言いたくないけどね」と吐き捨てるように教えてくれた。

 深海棲艦は塩をまぶしたナメクジのようにしぼんでいく。

 大きな魚を解体するような、同時に、機械を破壊していくような、生臭くも油臭い、鉄臭い相反する匂いが混ざって、吐き気を誘う。

 鉄板を引き裂く音、骨を断つ音、肉を食む音、全てがグロテスクである。


「これは……どうすれば……」

 僕はどうして良いのか分からず、大井参謀の顔色を覗った。

「何も言うな。誰にも言うなよ」

 僕は無言で同意した。


 彼女たちの食事が一段落すると、流石に我々の存在に気付いた。

「君たちに補給を保証しよう」

 恐るべき物に対してするような提案だろうか? だが、艦娘たち曰く、艦娘は人間を求めるものだという。


「ふふ、恐ろしいか?」

 軽巡天龍は、挑むような口調で問いかける。

 答えに迷っていると、軽巡龍田が、そのやりとりを妨害するように、問いかける。

「天龍ちゃんは、人間相手には強気なのね」

 穏やかだが、こちらの方が病的な怖さを感じる。

「や、やめろよ。こういうのは一発目の印象がだなぁ」

 そこから先は、二人の世界だ。

 心底仲が良いんだろう――いや、尻に敷かれているな。あの天龍と言う軽巡洋艦は。


 天龍が僕や参謀、他の艦艇に格好を付けようとすると、「困った子ね」と言う態度で龍田が窘める。その繰り返しだ。




 呆れていると、もう一隻の艦娘、千歳がやってきて、丁寧な挨拶をした。

「ひょっとして、妹の千代田がお邪魔していませんか?」

 二人の軽巡を余所に、千歳は真面目そうだ。

 食事の話に及ぶと、マズイものを見せてしまったとばかりに、恥ずかしそうな口調で答えるばかりだ。


 叢雲が言っていたように、天龍、龍田、そして千歳は、さも自然がそうであるかのように、我々を受け容れてくれた。

 拍子抜けと言えば拍子抜けである。

 神通の一件とて、不思議なほどスムーズなのだ。


「本当の意味での自由を求める奴なんて、人間の中でもよっぽど見つけられないよ。

 アナーキストを名乗っていたって、結局自分の決めたテリトリーの中に引き籠もってるだけって連中ばかりだからな」

 大井参謀は、起こった事は起こったことだから仕方ないとばかりに、ずっと冷静にこの状況を見ていた。

 僕は、急速に膨れあがる艦隊に対峙して、「エライ事になった」と漠々とした不安が成長するのを感じる。





 さて、母港に帰還する船が増えると、当然、資源の無駄遣いだと、主に陸軍の連中に叱られる。

 陸軍とて誰と戦うともない戦車の開発に勤しんでいるのだから、大きなお世話だと言いたい所だ。

 しかし、秘密は秘密だ。拾った艦だなんて言えない。


 だが、海軍の連中も馬鹿ではない。

 最大25ノットで走る快速タンカーを二隻と、輸送船二隻を建造していたのだ――正確には対深海棲艦決戦の生き残りの軽巡、駆逐艦をそれぞれ改造したものだ。

 演習もしていないというのに、早速、石油、ボーキサイト、その他稀少資源の輸送作戦が計画される。

 駆逐艦二隻、軽巡洋艦二隻、水上機母艦一隻の艦隊で護衛するというものだ。

 守る相手も、決して足の遅い船ではない――総司令部は非常に楽観的だった。


 彼らが無能な分、僕に重責がのし掛かる。

「海上護衛にご執心なうちは、まだマシな方だよ。

 あの馬鹿どもが、海軍の伝統だ、誇りだと言い出したら、それこそ逃げ出した方がマシだ」

 大井参謀は、先日の海上デートの事など、おくびにも出さずに、職務に専念する顔を見せている。

「戻ったら、現地の酒を買ってきますよ」

 身体に対して、大きな机を前にする参謀は、上目遣いに僕を見つめる。眼の先に、微かに口元をほころぶのが垣間見られる。


 厄介なのは、艦娘の宿舎の中だ。

 千歳さんに旗艦を頼むと、自分が頼られることに喜びを感じるようで、とても嬉しそうな顔をする。

 そして、最大限に出撃を喜んだのは、天龍である。

 宿舎に「よっしゃぁ!」の声が響く。

「龍田さん、天龍さんの事をお願いします」

 彼女は、おっとりした口調で、「天龍ちゃんは、困った子ねぇ」と微笑んでいる。


 これが厄介な事か? と、人は言うかも知れない。

 しかし、これほど賑やかになったのだから、対人間のストレスは確実に増えるだろう。

 その所為もあってか、叢雲さんが若干不機嫌だ。子日の元気さは変わらないが、如月さんはいつもの"僕へのからみ"を自粛している。


 このまま艦娘が増え続けたら、総司令部や政府はどうするつもりだろうか? 僕や大井参謀だけでは面倒を見切れなくなるのではないか?

 立ちすくむ僕をちっちゃな参謀が叱咤する。

「私が不安な顔をしたら、貴様は嫌な気分になるだろう。男は、顔に責任を持て」

 そうはいえども……





 ああやって偉そうな口を利いた少女な参謀は、その自分でさえも、随分と感情を表に出しているように見える。

 出航の時、遠ざかる港に向けて、双眼鏡を覗くと、いつまでも見送っている彼女の姿を何度でも見つける事が出来た。

「自分だって心配な顔してるじゃないか」




 またしても行きは順調だ。

 深海棲艦は、帰りの方が資源を多く積んでいると言う事を知っているのだろうか? 艦娘にしろ、深海棲艦にせよ、資源を狙っている事には違いがない――この例えは彼女たちに聞かせる訳には行かないが、腸内細菌に似ているなと思った。

 人間が、ある菌を指して悪玉だ、善玉だと言うのは、それが有用か有害かと言う違いで分類しているだけの事だ。

 善玉菌とて、人間から栄養を掠め取って繁殖している連中なのだし、人間どもに喜んで貰おうなどと考えて行動している訳じゃない。代謝物が偶然にも我々の身体にいいというだけなのだ。(勿論、そう言う戦略が、結果として"偶然"、功を奏していると言うのもあるだろうが)


 共生や共存という言葉は、あまりにも便利に使われすぎる。

 相手が話の通じる存在か、そうじゃないかというだけでも、我々が取るべき態度は違うはずだ。

 自然は、我々と同じように見て、考えて、相手ごとに態度を変えると言う事はない。

 山に農作物を供えようと、熊は見境もなく人を襲い、殺す。

 川に酒を流した所で、堤を築かなくて済むと言う事にはならない。


 深海棲艦と艦娘との違いがあるとすれば、純粋に話をする事ができ、また有用であると言うだけの事だ。

 そこに人間本位の決まり事があるのだなんて考えるのは、馬鹿者のすることだ。

 自然法則は、我々人類の都合とは無関係に存在しているのだ。


 目の前で、通りすがりの駆逐艦が沈んで行く。深海棲艦特有の、深海魚じみたフォルム――そう、深海棲艦だって、水底から発生すると言うのは、この姿を見た限りでの連想であり、通説である。

 この得体の知れない、生物とも機械とも言えぬ存在を目の当たりにすると、人類の存亡は、自然という恐ろしく巨大な仕組みの中に仕組まれた避けがたい決まり事のようにも思えて来る。

 一つ沈めては、また一つ、人類は衰退する。


 通りすがりの深海棲艦は、偵察機を利用して、彼らの視程外から狙い撃ちする。動きの鈍った所で、駆逐艦がとどめを刺す。

 練習も碌々していないというのに、案外上手く行くものである。是非とも、この成果を大井参謀に褒めて貰いたかった――しかし、今は無線封鎖だ。無闇に深海棲艦を近づけたくない。




 行きは順調だ――と言う言葉の裏面には、「問題は帰り」と書かれている。

 今回も、強力な戦隊をぶつけてくるのが、"資源を満載した帰路"なのであれば、やはり、アレとて、ものを考える生き物なのだろうと考えられる。

 意思疎通が出来るかどうか、そう言うのは夢物語としても、相手が考える存在であると言うのは、実は善いことである。

 逆に戦略を考えやすくなると言うものだ。


 ある動物学者が、狡猾な狼を仕留める為に、群の雌を一匹捕らえて囮に使ったという。

 狼と言う動物が、体力と俊敏性が高いというだけで成立すると言うだけであるなら、このような事を行えなかっただろう。

 考える相手だからこそ戦える。騙す事が出来る。

 大井参謀の受け売りの知識だが、そうならば吉報である――襲われることを期待するなんて馬鹿な提督だな。




「ほんっと、手応えのない奴らばかりだなぁ!」

 天龍の意識は、如何に武勲を上げるかと言う所にあるように見えた。

 そんなやんちゃな彼女を見守る龍田は、不穏な物言いはともかく、天龍のいい保護者となり、また天龍自身は、無自覚なままその状態をよしとしているのだ。


 千歳は、偵察と称して、頻繁に偵察機を飛ばしていた。

 「燃料に限りがあるからほどほどに」と言ってはいるが、彼女の狙いは、妹の探索にある。

 純粋に、海軍寄りの人間として言わせて貰うなら、同級は二つ以上あった方が安心だ。だから、僕は、彼女の職権濫用を大目に見てやっていた。

 結果として、敵艦を先手先手で見つける事に繋がっているのだし……




 海は、果てしないと言えるほど広い。

 地図で見れば、ひとっ飛びで海の向こうの大陸に行き着きそうなものだが、現実のスケールを目の前にすると、人はただ、その存在を畏れるしかない。

 軽巡の一番広い視野でもざっと10海里という範囲である。水平線に見えていた地点へ移動しても、20キロメートル弱しか移動したことにはならない。そんな状況が、数日間続く。

 その間、変わる景色は、空の模様と海の色だけである。

 顔を上げれば同じ高さに水平線が見え、天球に沿って月や星が巡る――北極星の高度が下がってきているのを見て、南進した距離を知る。




 港も近いか。

 到着予定の日、早く目覚めると、海の雰囲気が違う。

 陸だ。大陸だ。


 海上を進んでくる風と、陸を乗り越えてくる風の香りは違うものだ。

 また、川から流れ込むミネラルと、それによって育まれるプランクトンによって、海の色は濁るようになる。


 僕が喜びの声を上げると、艦娘は「何をそんなに」程度の熱量の返事があるのみだ。

 この気持ちは、彼女たちよりも乗艦する他の乗組員となら共有できるだろう――けれど、水兵……つまり日常の雑務と、いざというときのダメージコントロールの役目を受け持つ機関兵らと、僕との付き合いはあまりにも希薄だ。

 彼らは僕を避け、またそうした感情を持つ彼らを、僕自身も避けていたからだ。


 僕が人間に対して最低限の付き合いしか出来ない事に、艦娘はあまりにも無頓着だ――艦娘からすれば、言葉を交わせる"知性体"は僕と大井参謀だけだから、そのように思えるのだろう。

 それはまるで、フウイヌムとヤフーの関係みたいなものだ。見るからには猿であるガリバーが、フウイヌムに受け容れられたのは、彼らの話を聞けたからなのだ。(それは言葉が分かる以上に、文化的な距たりがあると言う意味でもある。貴族や華族が平民を何とも思わないように……)

 僕は、いつか、彼女たちとの決定的な違いに絶望して、死を覚悟した船出に出ようとするようになるのだろうか?




 艦隊は静かに湾内に入る。

 この前とは違う港だが、ここにも日本人の商館がある。

 我々の命脈は、何処までも商人に掴まれていると言う事なのだ。

 こうした背景について、僕が嫌みを言えるのは、大井参謀と、鎮守府の中の限られた人物だけだ。

「全く、国が小さくなったのに、相変わらず縄張り意識の強い連中だ」

 大井参謀だって、そう言って臍を噛んでいる。

 恐らく、海軍の上層部だって、僕と気持ちは同じ筈だ――情報部がしっかり機能していれば、こんな運送屋みたいな仕事をしなくて済むのだから。


 海軍にせよ陸軍にせよ、はたまた外務省にせよ、諜報とか情報とかに纏わる連中というのは、自立性が高い。

 連絡が絶たれようと、資金源が潰されようと、自力で行動し、目的を達成する力を持っている。

 しかし、そんな状況が二十年近くも続けば、話は全く違ってくる。

 陸軍や外務省がどれほど頑張っているのか知らないが、海軍の連中と来たら、好き勝手にやっていると伝え聞く。


 商人は、諜報員に近づき、また諜報員も商人を必要とした。今や元情報部を信頼しきるのは危険なのだ。

 その点で言えば、諜報員だろうと、商人だろうと、手放しで信頼できる訳がない。


 政府はちゃんとしているのだろうか?

 しているんだろうな――この自信の背景にあるのは、東機関の手の者か?

 何にしても、そう言う賢い連中にとって、我々は、言われた荷物を律儀に運び、人を、情報を媒介するだけの存在なのだ。

 全く、こんな所に限って、海軍の誇りもクソもない。




 この港には、接岸出来る岸壁が二隻分しかない。

 これは、僕及び海軍にとって、ちょっとばかり便利な事だった。

 沖に投錨している限りは、変な連中がやって来る事はないし、また、逆に艦娘が上陸したがらないだろうからだ。


 内火艇を使って上陸すると――出迎えたのは、前の港で出迎えたあの男だった。

「やぁ、久し振りじゃないか」







※話とは無関係ですが、俺提督は、レベル99赤城、97加賀やレベル84長門陸奥などに加え、レベル90まで育て上げた島風、雪風を引き連れてE4に出撃した結果、燃料とボーキサイトを1.5万ほど融かして、何の成果も上げられませんでした!

 何度ボスに行っても、一度も止めを刺さないんですよ。

 半分ぐらいのレベルの艦で撃沈報告があるのに……司令部レベル94にして手に入れてない娘が6隻にも及ぶし、こんなに引きの悪い提督も他にいないんじゃないかなと。

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