周りの奴らは何も知らない。
あいつらは、俺が最近ファンになったばかりのニワカ者だと思ってやがる。
ファン同士で顔を見合わせることは少ない。だから、お互いの顔を覚えることは少ない――しかし、俺は奴らの顔を覚えている。
今となっては、彼女に本当の意味でふれあうことは二度と出来ない。
二週間前に、ファン投票で落選するまでは、俺は――私は、あのステージの上にいた。
僕は、謎の生き物によって、アイドルに変身させられた。
全国から集められた美少女の中に放り込まれ、ファン投票で勝ち抜き、一番になった時、"永遠"が得られるのだと教えられた。
今や、"あの子"を憶えている人はいないだろう。
永遠が失われると言うのは、要するにそういう事だ。
ステージから降りた女の子は、二度とアイドルとして活動してはいけない決まりになっている。
嫌らしいことに、僕は、元の姿に戻っている。他の少女以下の存在だ。
消えていった子や、ステージ上の彼女たちとは仲良くやって来たと思う。
大好きな子もいたし、俺よりも上に上り詰めて欲しいなどと思う時もあった。しかし、"永遠"には代えがたい。
他の子も似たようなものだ。
楽しくも忙しい生活の中で、皆、若さを爆発させていた。
落選者が出れば皆で泣いた。
ほくそ笑んでいる者など誰一人いなかった。
俺だって、何度泣いたことか。
だが、今、俺と彼女たちとは立場が異なる。
ただ、一番仲の良かったあの子が最後まで残る事を祈るばかりだ。
周りの奴らは何も知らない。
隣のおっさんなんて、二週間ぐらい前にふらっと現れたニワカ者じゃないか。
俺は違う。ずっと近くで、彼女たちと一緒にいたのだ。"永遠"を求めて。
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